学びと教育
外国にルーツを持つ高校生にとって、大学進学には「日本語で専門の授業についていけるか」「大学に馴染めるか」という不安がつきものです。聖学院大学では、外国にルーツを持つ生徒を対象にした「講義方式入試」を新たに実施します。実際に聖学院で学んでいる外国ルーツの学生2人と、一緒に学ぶ日本人学生、日本語教育を担当する西村由美先生に、入学してからの毎日を聞きました。
前編では、大学選びのきっかけと、日本語での学びを支える授業や先生のサポートについて紹介します。
座談会メンバー
ジーロ セイディさん|政治経済学科2年。トルコにルーツを持つ。経営に関心があり、授業「インターンシップPBL型」では女子バレーボールチームの集客企画に取り組んだ。日本語能力試験N1の合格を目指し、日本語の授業も受講している。
梅野 リアスミンさん|国際文化学科2年。フィリピンにルーツを持つ。オープンキャンパスで先生と話したことをきっかけに入学。学科の仲間と英語で交流するサークル「English Buddies」を立ち上げ、様々なイベントを企画している。日本語は友達と教え合いながら勉強中。
川村 天音さん|国際文化学科2年。英語の教員を目指し、留学を目標に英語を勉強中。リアスミンさんとは英語の授業で同じクラス。身近に英語で話せる友達がいることで、英語力の伸びを実感している。
西村 由美先生|日本語教育担当の教員。留学生や外国にルーツを持つ学生の日本語教育に携わり、一人ひとりのレベルや希望に合わせた学び方を学生と一緒に考えている。
――大学を選ぶとき、何が決め手になりましたか?
リアスミン:私は、オープンキャンパスで先生と直接話せたのが大きかったです。そこで、私に合う学科として国際文化学科を勧めてもらいました。高校の先生も聖学院を勧めてくれたし、家族の知り合いの先輩も通っていたので、安心して決められました。家から通いやすいのもよかったです。
ジーロ:僕は一般受験で別の大学を目指していたんですが、高校の先生や、サポートしてくれていた人たちに安心できる環境がある大学と勧められて、聖学院で頑張ろうと決めました。
――入学前に、不安だったことはありますか?
ジーロ:日本人以外の友達もつくりたかったんですが、いろいろな国の人と交流できる環境があるのか、わからなくて。でも入ってみたら、いろいろな背景を持つ人たちも多く、自分に合った場所だなと感じました。
――リアスミンさんは、日本語の不安はありましたか?
リアスミン:最初は少し心配でした。でも、わからないことがあると、先生がどうしたらいいか一緒に考えてくれます。国際文化学科には英語を使う授業もあるし、友達も日本語を教えてくれる。だから今は、大学の授業も大丈夫です。
わからないことは先生が一緒に考えてくれて、友達も日本語を教えてくれる。今は大学の授業も大丈夫と話すリアスミンさん
日常会話には困らなくても、大学の授業では、専門用語や論述など、また別の日本語の力が求められます。
ジーロさんが苦労したのは、1年生で受けた政治学の授業でした。
――大学の授業で、難しいと感じたことはありますか?
ジーロ:最後のテストで成績のほとんどが決まる授業があって、しかも論述でした。日本語で長い文章を書くのは、かなり大変でした。
――どうやって乗り越えたのですか?
ジーロ:秋学期に取った別の先生の政治学は、少人数のクラスでした。毎回先生に質問できる距離だったので、わからないところをすぐに聞けて、内容もどんどん理解できたんです。試験の前には、先生に「この試験は自分には難しいです」と正直に伝えました。そうしたら「できる限り頑張って」と背中を押してもらって。ちゃんと単位を取れました。
――少人数のよさを感じたんですね。
ジーロ:論述系の授業は、少人数のクラスがいちばんいいと思います。人数が多いと、何がわからないのかもわからなくなってしまうので。先生との距離が近いのは、留学生や外国にルーツを持つ学生にとっても学びやすいと思います。
――授業の取り方で困ったことはありましたか?
ジーロ:高校が単位制だったので慣れているつもりでしたが、大学は授業がいっぱいあって、何が自分に合うのかわからなかったんです。1年生の秋、取る授業が少なすぎたときに、先生が気づいて呼んでくれました。そこで相談して、どれくらい取ればいいのかがわかってきました。
困ったときに、先生のほうから気づいて声をかけてくれる。少人数だからこそ、一人ひとりの様子に目が届きます。
少人数の授業で、毎回先生に質問できたことが力になったと話すジーロさん
そうして専門の学びに取り組んできたジーロさんが「いちばん印象に残っている」と話すのが、「インターンシップPBL型」という授業です。上尾市を拠点とする女子バレーボールチーム・埼玉上尾メディックスと連携し、「若い世代のファンをどう増やすか」という課題に、学部・学科を越えた学生たちがチームで取り組みました。
――どんな授業だったのですか?
ジーロ:「試合にどうしたらもっと観客が来てもらえるか」という課題を、自分たちで考える授業です。みんなで案を出し合って、考えるだけじゃなく、実際に行動まで移しました。選手と一緒に駅でチラシを配ったりもしました。
――実際に街で動いたんですね。結果はどうでしたか?
ジーロ:最終日の試合は、高校生と学生の観戦を無料にしました。そうしたら、いつもよりたくさんの人が来てくれて。自分たちで考えた案で、本当に効果が出たんです。それがいちばん印象に残っています。
もともと経営に興味があったジーロさん。自分たちの案で人の動きが変わるのを、実際に確かめる経験になりました。
聖学院大学には、留学生や外国にルーツを持つ学生のための日本語科目があります。
――聖学院大学の日本語の授業には、どんな特徴がありますか?
西村:入学したときのレベルに合わせて、3段階のクラスが用意されています。科目も「聞く」「話す」「読む」「書く」の四技能に加え、大学での専門的な学びにつながるアカデミックな日本語などに分かれています。外国にルーツを持つ学生は、それを全部取る必要はありません。自分に合うレベルの、自分に必要な力の科目を選んで取れるのが特徴です。
――自分のレベルは、どうやって知ればいいですか?
西村:入学が決まったら、まず、3月に学内で行う日本語能力試験(プレイスメントテスト)を受けてみてほしいですね。レベルを確認して、自分に合うレベルの必要な科目を選んでもらえます。
――入学したときに試験を受けなかった場合、後からでも授業は取れるのですか?
西村:取れます。プログラムは1から4まで順番に組まれていますが、必ずその通りに進まなくても大丈夫です。
「必要なものを、必要なだけ取ってほしい」と、日本語の授業について話す西村先生
実際にジーロさんは、秋学期から日本語の授業を取り始めました。
――ジーロさんは、どうして日本語の授業を取ろうと思ったんですか?
ジーロ:日本語能力試験のN1に向けて、もっと力をつけたいと思ったんです。
自分で学生支援課に行って、「取れますか」と聞きました。学生支援課の人が日本語の担当の先生に相談してくれて、OKが出て授業に出られるようになりました。
――授業のほかに、日本語の勉強で利用している場所はありますか?
ジーロ:ラーニングセンターに行ったことがあります。日本語能力試験の参考書があるか確認しに行って、そのときに質問もしました。
ラーニングセンターは、図書館2階にある学修支援の窓口です。常駐する教員に、英語やレポートの書き方・添削、日本語、勉強方法などを個別に相談できます。授業の中だけでなく、自分のペースで学びたいときにも頼れる場所です。
――リアスミンさんは、日本語の授業を受けていますか?
リアスミン:1年生のとき、日本語の授業を受けてみようと思いました。でも一度出てみたら、私のレベルとは少し違いました。そのときアドバイザーの先生が「一緒に勉強しましょう」と言ってくれて。今はセルフスタディで頑張っています。友達もたくさん教えてくれます。友達がいちばんいい先生です。
――日本語は友達に教わって、英語は友達に教える。お互いがいい先生なんですね。
西村:リアスミンさんも、たとえば「作文の授業だけ出てみようかな」と思ったときには、ぜひ相談してください。
――先生から見て、聖学院の日本語教育のよさはどこにありますか?
西村:日本語の授業は、日本語ができない人のための補習ではありません。専門の授業を日本語で学ぶための土台です。だから「プログラムが決まっているから受けられません」ではなく、希望があれば「どうしたらできるか」を一緒に考えます。
アドバイザーの先生や学生支援課、日本語の担当教員が情報を共有して、一人ひとりに合う方法を探せるのが聖学院のよさだと思います。「ここをもう少し鍛えたい」と思ったときに、前向きに相談してもらえればうれしいです。
図書館2階にあるラーニングセンター。日本語やレポートなど、勉強のことを個別に相談できます
「日本人だけだったら、なかった」──後編は、学生同士でつくる交流の場へ
日本語の授業や先生のサポートを活かしながら、専門の学びに取り組んでいる2人。
後編では、リアスミンさんの提案から生まれたクリスマスパーティーや、学生が立ち上げたサークルなど、学生同士でつくる交流の場について聞きます。一緒に学ぶ日本人学生にとって、外国にルーツを持つ友達はどんな存在なのか。川村さんと西村先生の話にも注目です。
講義を聞いてノートを取り、その内容を面接官に発表する入試です。あわせて、調査書と自己カタログをもとにした面接を行います。合格者は入学後、日本語能力に応じた日本語クラスを受講できます。