観光地ではないまちや、大学の近くにある身近な地域にも、歴史や文化を見つめ直すきっかけがあります。日本文化学科・村松ゼミ(歴史・思想ゼミ)は、千葉県野田市と大宮盆栽村を訪ねるゼミ合宿を実施しました。歩いて、聞いて、語り合った2日間。そこで学生たちが考えたのは、地域の魅力だけではなく、自分がこれから「地元」とどう関わって生きていくか、ということでした。

大宮盆栽村「清香園」で働く日本文化学科のOGを訪問
日本文化学科の村松ゼミ(歴史・思想ゼミ)では、2026年8月27日・28日に一泊二日のゼミ合宿を行いました。行き先は、近代化産業遺産のまちとして知られる千葉県野田市と、聖学院大学にほど近い大宮盆栽村です。
一見すると、「なぜそこがゼミ合宿の行き先なのだろう」と思う人もいるかもしれません。けれど今回の合宿には、身近な地域にある歴史や文化を見つめ直し、自分の“地元”との関わり方を考える、というはっきりしたテーマがありました。
村松晋教授は、これからの社会では、東京だけに人や仕事が集まるあり方ではなく、それぞれの地域でどう暮らし、どう支えていくかがますます問われるようになると考えています。だからこそ学生たちにも、遠くの有名な場所ではなく、足元にある地域を見つめながら、自分の将来を考えてほしい。そんな思いが、この合宿には込められていました。
1日目に訪れた野田市では、まず「キッコーマンもの知りしょうゆ館」で、醤油づくりの工程や地域産業とのつながりを学びました。続いて「キッコーマン国際食文化研究センター」では、醤油という身近な調味料が、食文化の中でどんな広がりを持っているのかを知る時間になりました。
その後は、野田市郷土博物館へ。ちょうど企画展「晴れの日の服装―和装から洋装まで―」も開催されており、地域の暮らしや文化の積み重ねを、より具体的に感じることができました。ただ展示を見るだけで終わらず、学芸員の解説を聞きながら歩けたことで、「このまちは何を大切にしてきたのか」が少しずつ見えてきます。
今回の旅程づくりに中心となって関わったのは、野田市在住の2年生・成川龍さんです。先生と事前に下見を行い、醤油のまちとしての野田市を知る流れと、地域の歴史にふれる流れをつなげて、この合宿の形をつくっていきました。自分の地元を、案内する側として見直す。その経験もまた、この合宿ならではの学びになっていたようです。
キッコーマンもの知りしょうゆ館を訪問し、醤油づくりの工程や、さらに製造の歴史や文化的背景についても学びました。
キッコーマン国際食文化研究センターでは各国の食文化と醤油の融合や、醤油の地域特性とその形成要因について、センターの方より解説いただきました。
野田市郷土博物館へ。学芸員の解説を聞きながら、醤油のまちとしての野田市とこの地域の歴史を学びました。
1日目の見学後には、野田市市民会館の和室でディスカッションが行われました。会場は、1924年頃に建てられた旧茂木佐平治邸。庭園のある落ち着いた日本家屋で、学生たちは事前にまとめた「合宿のしおり」を手に、それぞれの地元の歴史・文化遺産や、卒業後に地元とどう関わりたいかを語り合いました。
そこで出てきたのは、ひとつの正解ではありません。地元に残って暮らしたいという思いもあれば、いったん別の地域で経験を積んでから戻りたいという考えもある。あるいは、日本で働いた後に母国へ戻り、学んだことを伝えたいという声もありました。共通していたのは、「地元」を当たり前の背景として見るのではなく、自分の生き方と結びつけて考え始めていたことです。
2日目には、大宮盆栽村も訪れました。ここでは、盆栽園「清香園」で働く日本文化学科のOGが案内を担当。大学での学びが卒業後の仕事や関わり方につながっている姿にふれられたことも、学生たちにとって大きかったはずです。地域の文化遺産を見るだけでなく、それを支え、伝える人の存在まで含めて学べた2日間になりました。
野田市市民会館(旧茂木佐平治邸)でゼミを実施。
「合宿のしおり」を手に、それぞれの地元の歴史・文化遺産や、卒業後に地元とどう関わりたいかを語り合いました。
清香園を訪問し、ここで働く卒業生の柏倉さんと歓談の時を持ちました。なぜ盆栽を職業に選んだのか、卒論や修論に込めた問題意識など、ゼミ生に熱意を込めて語ってくれました。
遠くへ行かなくても、学びは深くできる
ゼミ合宿というと、特別な観光地や有名な場所を思い浮かべるかもしれません。でも今回の村松ゼミが見せてくれたのは、身近な地域だからこそ見えてくる学びがある、ということでした。
地域の歴史や文化を知ることは、その土地のことを覚えるだけではありません。そこに暮らす人の思いや、これから自分がどんなふうに地域と関わっていくかを考える入り口にもなります。教室で学ぶだけではつかみにくい問いを、実際に歩き、聞き、語り合いながら考えられる。そんな学び方が、聖学院大学日本文化学科にはあります。